Independent Consultant – フリーコンサルタントの実態

フリーコンサルタントの実態 ~より充実したON&OFFを求めて、コンサルティングファームから独立して個人事業主として働く(2021年版)

フリーコンサルタントとして独立するデメリット6つ

   

フリーコンサルタントとして独立する最大のリスク「仕事が取れないと収入がなくなる」については既に別記事で書きましたが、他にもリスクやデメリットと言えそうなことはいくつかあります。この記事ではそれについて書きます。

1. 在庫が自分ひとりの空き稼働になる

ファームに所属していれば、自分の稼働が空いていない時に仕事の話が来た場合、「あいにく私は空いていないのですが、弊社で他にその領域が得意な者がおりますので、その者を紹介させていただきます」などと他のメンバーに案件を振ることで、ファームという事業体として、せっかくの仕事をみすみす逃すといったことをせずに済むケースも多いです。しかし、個人でやっていると、自分が案件を受けられなければ「すいません、あいにく今は身動きが取れませんで…またの機会にお願いします」などと言わねばならず、その仕事を他に取られてしまうことが起きやすくなります。
これをカバーする方法として、自分の周辺に信頼をおける先があれば「私は空いていないのですが、私の信頼できる者を紹介できるかもしれません」という手もありますが、往々にして信頼のおけるデキるコンサルタントほど、聞いたところで「ごめん、今は俺も動けないわ」と言われることも多いものです。そのような紹介が成り立ち、自分が商流に入れれば機会損失は防げますが、なかなか難しいと心得ておいた方がいいでしょう。

2. 成長の道筋は自分で探るしかない

コンサルティングファームでパートナーまで上り詰めたという人であれば、ファームにおいても別に誰かが「君はここを伸ばした方がいいよ」とか言ってくれることもないのでしょうが、そうでなく、自分より上の人がいる場合は、その人が自分の志向や得意分野を見てアサインを決めたり、あるいはキャリアプランまで考えてくれたりすることも少なくありません。また、ファームにいれば研修だったり、他プロジェクトの事例共有だったり、自分が稼働しているプロジェクト外での成長機会も得ることができます。
独立すると、これらを自分で考えることになります。現在の自分を知った上で「自分はいまどこを伸ばしていくのがいいんだろう?そのためには何をしたらいいんだ?」にヒントをくれる先輩はいませんし、価値観を共有している仲間から「お前、XXに興味あるって言ってなかったっけ?今度、たぶんそれに近いプロジェクトの事例共有会あるけど、出る?」などと声をかけてもらえることもありません。
独立志向がある時点で、これらの点で他人をあてにする度合いは低い方も多いような気もしますし、そこまで気にすることではないかもしれませんが、デメリットとして一応挙げました。なお、実際、自分のできる範囲だけで戦い続けている感覚や自分を切り売りしている感覚に不安を覚えてファームに戻ってくるフリーコンサルタントの方も一定数いることを付け加えておきます。

3. 仲間がいなくてさみしい

「何、女々しいこと言ってるんだ」と思われるかもしれませんが、実際に独立して初めて、これがけっこう身に染みる人もいるようです。
コンサルティングはもちろんクライアントがいてこそ成り立つ仕事ですので、他人と話す機会は少なくないですし、クライアントと一緒に飲みに行ったりすることもあります。ただ、ファームにいた時と比べると、普段クライアント先に常駐していて、たまに帰社して同期の顔を見つけて「ひさしぶり。元気?」などとやったりすることもなくなれば、会社が主催してくれるクリスマスパーティーで1年間の互いの労をねぎらうことなんかもなくなります。
また、仕事の場においても、後輩が成長していく姿を見て喜びを得ることもなくなりますし、同期と切磋琢磨してきた土俵を下りることにもなります。
そういった環境でもあまりさみしさを感じない人や、個人的なつながりで十分満たされている人であれば問題ないでしょうが、そうでないとこれもフリーコンサルタントになることのデメリットと言えるでしょう。

4. 福利厚生がない

個人事業主は会社員と違って福利厚生がありません(※下注)。ファームに所属していれば、社員旅行やクリスマスパーティーなどのイベントを、会社が経費負担して開催してくれますが、そういったものは当然ありません。また、手当の類もありません。実際問題、コンサルティングファームで住宅手当や家賃補助、家族手当などを出しているところは珍しいですが、それでも出張手当などが出るところはあります。独立するとそういったものもありません。
健康面の福利厚生もなくなります。会社員であれば、年1回、会社が健康診断や人間ドック(フリーコンサルタントの健康診断についてはこちらの記事をご覧ください)に行くよう手配してくれますが、それもなくなります。必要であれば個人で自腹を切って利用することになりますし、その費用を経費とすることもできません。
他にも、会社に属していることでレストランやホテル、旅行、スポーツジム、レジャー施設(ディズニーランドなど)などを安く利用できる割引制度があった人は独立するとなくなりますし、社外研修も行く場合は自腹になります。
こうして見てみると、会社の福利厚生ってけっこういろいろあるんですよね。

※個人事業主の福利厚生について、厳密には「無い」と明確に定められているわけではありません。ただし、「福利厚生」の前提として従業員の福祉を向上させることが目的になっていること、というのがあります。福利厚生は使用者(従業員)のためのものという原則がありますので、事業主ひとり、もしくは、加えてその専従者(例えば奥さん)だけで事業を営んでいる場合は使えないと思っておいた方がいいでしょう。

5. (住宅)ローンを組みにくくなる

将来、家を購入することをお考えの方は気にしておいた方がいいかもしれません。個人事業主としてやっていることで住宅ローンの審査が通りにくくなるケースがあるようです。少なくとも年収が同じ会社員と個人事業主とでは、勤続年数や職歴にもよるでしょうが、会社員の方が審査が通る可能性は高いでしょう。
また、住宅ローンの審査に提出する書類として、会社員は源泉徴収票等を求められるのに対し、個人事業主は確定申告書を最低でも2年分、理想を言えば3年分を求められます。つまり、確定申告を最低2回した後=独立後2年以上を経ていないと住宅ローンをそもそも組めない可能性すらあります。
「独立するなら家を買った後にしろ」という話を聞いたことがある人もいると思います。個人でやっているからといって住宅ローンを組むことができなくなるわけではないですが、会社員に比べてリスクが大きくなることは認識しておいてもいいでしょう。

6. 税金を自分で納めないといけない。確定申告が必要。

会社員だと税金は、会社が給与天引きしてくれて、自分でやることと言えば年末調整くらい、という人も少なくありません。一方、個人事業主は、全員が税務署に開業届を出した上で、毎年2月15日頃~3月15日頃の間にその前年分の確定申告書を提出しなければいけません。
コンサルティング業は、例えばカフェを開業するのなんかと比べても、基本的に仕入れもなければ、売上も数百円の明細が積み重なっていくのではなく、手掛けている案件がひとつであれば毎月まとまった額が1本振り込まれるだけですので、記帳自体の面倒は正直そこまでないかもしれません。しかし、独立当初は何かとわからないものですし、確定申告は、年末調整よりも数段手間がかかる作業であることは間違いありません。
デメリットというよりも、独立するとしなければならなくなることのひとつですが、私は毎年、確定申告の時期になるとこの作業で土日を使うこともあるくらいですので、それくらいのものだと心得ておく必要はあると思います。

以上、フリーコンサルタントとして独立することのデメリットについて、思いつくものを挙げてみました。また何か思いついたら追記、更新していきます。


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