Independent Consultant – フリーコンサルタントの実態

フリーコンサルタントの実態 ~より充実したON&OFFを求めて、コンサルティングファームから独立して個人事業主として働く(2021年版)

フリーコンサルタントとして独立するメリット9つ

   

以前、コンサルタントとして独立してフリーになることのデメリットについて書きましたが、もちろんその逆、独立することで得られるメリットやリターンもあります。この記事ではその「個人事業主コンサルタントとして独立してよかったこと」を書いてみましょう。

1. 収入が増えた

一番わかりやすいリターンですね。収入が増えました
こちらの記事では、独立することのデメリットとして「福利厚生がなくなる」などと書きましたが、それらを自腹でまかなっても十二分に余りある増え方です。フリーコンサルタントとして独立した場合のリスクやデメリットのうち、経済的なものについてはこのように稼働している間のフィーである程度担保するのも、現実的な対策かと思います。
なお、念のため補足しますと、私の収入は増えましたが、クライアントへの請求フィーはコンサルファームにいた時より安くなっています。コンサルファームは新卒入社したばかりで研修中の社員を含め、その時稼働していない者にも会社として給与を支払わないといけないので、その分、稼働しているコンサルタントのフィーを高くする必要がありますが、個人でやっている場合はそのように他の人を養う必要はありませんので、その分、クライアントへの請求フィーは抑えることができます。そして、それでも自分の身入りはファーム時代より増やすことが十分に可能です。
※フリーコンサルタントの年収についてはこちらの記事もご覧ください。

2. 目の前の案件、クライアントに集中できる

ファームに所属している場合、特にそれなりに上のクラスになってくると目の前の案件に100%すべての時間を投入するというわけにはいかなくなってきます。メンバーの評価をしないといけなかったり、これはジュニアクラスでもそうですが、案件中でも「この研修は参加必須です」などと時間的拘束を受けることもあったりします。採用面接の面接官を務めることもあるでしょうし、会社から、雑誌やWebへの寄稿、本の執筆を求められることもあるかもしれません。
これらはもちろんすべてそのファームとして必要なことですが、発注してくださっているクライアントからしてみれば大半は直接的には関係のない話です。
「記事を書いている時間があったら目の前のクライアントのためにいそしみたい」、そのような志向の方にとっては、独立はこの点でもいい選択肢になると言えるでしょう。

3. やりたくない案件をやらなくていい

ファームに所属していると、自分の案件を決めるのはファームですが、独立したら当然それも自分で決めることができます。これは、ファームが案件をくれることはなく、すべて自分で案件を取らないといけないことの裏返しとも言えます。

例えば、ずっと都内で仕事をしていたいと思っている人でも、ファームに所属していれば、地方や海外の案件にアサインされたら行かなければいけないですし、体力的にハードな案件はやりたくないと思っていたとしても、炎上している案件があったら問答無用で駆り出され、深夜帰宅やホテル泊が続くこともあり得ます。一方、個人でやっていれば、やりたくない仕事は取りに行かなければいいだけです。あるいは「○万円/月いただければ参画を前向きに考えます」といったように条件交渉することもできます。
また、案件の内容やクライアントも自分の好きなものを選べます。「あの会社が手がけているビジネス、面白そうだなあ」と思ったらその会社の案件を取りに行けばいいわけですし、「ネクタイしないで働きたいな」と思ったらおカタイ業種の案件を避ければいいのです。

もちろん、これは言うほど簡単なことではないでしょう。実際は収入のためにやりたくない案件をやらなければならない時もあるかもしれません。ですが、そうであったとしても、他人から「この案件やって」と決められるよりは自由度が高いことは間違いありません。これもメリットのひとつと言えます。

4. 収入を自分で増やせる

1.と似ていますが、1.は結果、つまりは過去の話であるのに対して、これは将来の可能性の話として書いています。
当たり前の話ですが、会社員だと給与は会社が決めます。その決め方は様々でしょうし、中には納得感のある決め方をしている会社もあると思いますが、とはいえ、収入を決めるのは会社員である以上、どうしたって会社です。
対して、個人事業主になると、収入を決めるのは自分になります。その気になれば、「今は月額100万円でこの仕事を請け負っているけど、これだけの働きをしているのに、このフィーは安売りしすぎだな。次、契約を更新する時は月額150万円にしよう」といったことも可能になります。会社員として働いていると、ひと月の給与が50万円も上がることなんて、役員クラスや外資系金融は別にしてまず無いでしょう。仮にあったとしても、そのタイミングは年1回か、多くて2回、決められたタイミングだろうと思います。
フリーコンサルタントは収入を自分で、好きな時に好きなだけ上げる権利を持っています。もちろん、コンサルティングもビジネスなので、お金を払う側がそれに納得すればですが、クライアントが納得しさえすれば収入を上げることができるということ自体、可能性のある話だと思います。

5. 上司がいない。全責任は常に自分

独立している個人事業”主”には上司がいません。主(あるじ)が自分ですからね。このため、案件遂行における全責任は常に自分にありますし、万が一、自分ひとりではどうにもできない状態になった時でも、助けてくれる人はいません。そのまま自分がリカバリできなければ、最悪、当初の予定よりも早く契約が終了してしまうかもしれません。
この環境をどう捉えるかですが、たとえば「それは不安だ。近くにいなくてもいいから、帰社した時に意見を仰げる先輩はやっぱりいてほしい」と思うようであれば、もしかしたら独立はおすすめできないかもしれません。逆に「それがいいんじゃないか。だいたい、クライアントと一番話しているのは自分なんだし、現場にいないパートナーなんかにレビューという名で茶々を入れられたっていいことなかったし」という人にとっては、これは大きなメリットになるでしょう。あえて両極端な例を挙げましたが。
クライアントと相対するのは常に自分で、尚且つ、その時のパフォーマンスが収入にダイレクトに反映される、これはこれで成長できるいい環境だと思います。「ファームにいた時は、このプレゼンはパートナーがやっただろうな」というものも自分ができるわけですからね。そう、「自分ができる!」と思えるかどうかです、「自分がやらなくちゃいけないのか…」ではなくて。

6. いろいろな話をいただける/できるようになった

独立して気づいたのですが、会社に所属していないというだけで、以前より多くの方が気軽に声をかけてくださるようになりました。
わかりやすい例は「うちに入社しないか」です。「執行役員として来てくれないか」というお話をいただいたこともあります。これらはいずれも独立後にご一緒させていただいたクライアントからいただいたお言葉ですが、コンサルティングファームに所属しているコンサルタントをクライアントが引き抜いてしまうのはご法度な中、フリーコンサルタントはどこにも所属していないということで、そういったお話をするのにクライアント側も抵抗がないのでしょう。これらの話を受けるかどうかは別にして、お話をいただけること自体、ありがたいですね。
他にも、複数のコンサルティングファームと案件を融通しあったり、人を融通しあったりすることもできるようになりました。ファームに所属していると、自社で受け切れないからといって他社に簡単に案件を渡すわけにはいかないですし、「うちの案件の追加人員として、こういう人がほしいけど誰かいない?」と、例えばアクセンチュアがPwCに打診するといったことも、商流の問題もあるため、なかなか難しいと思います。その点、個人はそういった色がついていないので、自分で受けきれない案件があった場合は複数のファームに打診できる、つまり複数のファームと関係性を保つことができます。

7. 休暇を自由に設計できる

会社員は、有給休暇は年間20日付与など、有給休暇の取得日数上限が定められています。個人でやっていると有給休暇自体がなくなるので、「仕事をしなくても年間20日分はお金が入ってくる」ということ自体は会社員でいることのメリットと言えるでしょう。しかし、この有給休暇って、多くの会社では暗黙のうちに「1年のうち、休める営業日数は20日ですよ」と決められているのとほぼ同義ではないでしょうか。たとえば有給休暇を使い切った人が「その日の分の給料いらないので今月また5日休みまーす」とか「この案件が今月で終わったら、世界一周旅行に出るので半年休職しますね」といったことが認められる会社、あるいは、気兼ねなしに言える職場がどの程度あるでしょうか。
個人事業主はこの点においても自由です。1ヶ月のうち、5日休みたかったらその前提でクライアントと契約を組めばいいわけですし、半年休んで世界一周旅行に出かけたかったら、案件が終わったら次の仕事を取りにいかずに出かければいいのです。これは何も極論ではなく、実際にそういう働き方をしているフリーコンサルタントもいます。

8. 副業自由

会社によっては副業禁止規定を設けているところもありますが、独立するとこれに縛られることもなくなります。また、会社員だと会社に断りなく本を書いたり、場合によってはSNSも使えなかったりすることもあるようですが、当然そういった制限もなくなります。
考えてみると、この副業禁止規定ってすごいですよね。「会社の業務に集中してもらうために副業は禁止します。あなたの収入はうちの会社がお支払いする給与・賞与です」などと言って従業員を縛っておきながら、これは極端な例ですが、最悪、倒産したりすることもあるわけです。以前「個人事業主だと仕事がとれないと収入がなくなるリスクがある」と書きましたが、副業禁止の会社に勤めていたら副業で収入ゼロになるリスクをヘッジすることもできず、結果、収入が会社からの給与という一本足になり、その一本足も、ある日突然、自分の力ではどうにもならないことで、例えば経営陣がポンコツで米国での原発建設のリスクを見誤ったなどの理由で折られ得るわけです。私には、これはこれでとてもリスキーに思えます。

9. 税金、年金、健康保険などの制度に詳しくなった

もしかしたらただ単に、私がそうだというだけかもしれません。会社員として働いていると、これらは基本的に給与から天引されていて、自分でやることといえば年末調整くらいという人も多いと思います。そして、私もそうだったのですが、その程度の関与度合いだと、いつしか天引きされている金額がいくらかも意識しなくなり、それはどのように算出された金額か、そのロジックや算出式なんてほとんどわからないという人もいるのではないでしょうか。
そこからすると、個人事業主は税理士にお願いしない限りは自分で税金を計算して確定申告しますし、それをベースに健康保険や年金も支払うので、それらに対して格段に意識が向くことになります。
このことの何がいいかというと、例えば節税に関して調べるキッカケになったなど、具体的な話もありますが、個人的にはなんとなく、社会人でありながらこれまでよく調べもしなかったことにそれなりに詳しくなれたということ自体に価値を感じています。
繰り返しになりますが、もともとちゃんと関心を持って調べていたよ、という会社員の方にとってはこれは独立によって得られるメリットにはなり得ないと思います。あくまでも私がそうでしたということです。

とりあえず、思いつくままに9個書いてみました。
ここまで読んで感じている方もいらっしゃるでしょうが、ここで挙げたメリットの全てが、現在、コンサルティングファームで働いている方全員に当てはまるものかと言えばそうではないと思います。
「収入が増える」かどうかは人によるでしょうし、「目の前の案件に集中できる」といわれても、ファームの環境を整えて組織を強くしていくことにやりがいを感じる、という人もいるでしょう。「上司がいない」のは不安だし、「副業自由」って言われてもやりたい副業もない、「税金、年金、健康保険などの制度に詳しくなった」っていいことない、そういうのは全部会社にお任せしておきたい、という人もいると思います。
つまるところ、私はこれらを「フリーコンサルタントとして独立することのメリット」として書きましたが、これらがメリットになるかどうかは人によるということです。逆に、私がメリットと感じていないことであっても、メリットだと感じる人もいるかもしれません。そういう方は「なぜ、このメリットがこの記事には載ってないんだ?」とお思いのことでしょう。
この記事を読みながら「確かにそれはいいな」であったり「それはちょっと違うかな」などと、自分に言い聞かせながら、フリーコンサルタントへの適性を考える一助になればうれしく思います。
もしかしたら他にもメリットはあるかもしれません。思い出したらまた書きます。

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