フィー(報酬)が幸せをもたらすわけではない
当サイトではフリーランスとして独立したコンサルタントの働き方あれこれについて書いていくなどと言っておきながら、その中身は意外とフィー(お金)に関するものが少なくないことに気が付きました。ひとつ前の投稿でもフィーの話に触れましたしね。
そこであえてこんなタイトルのエントリを書いてみました。
フィー(報酬)が幸せをもたらすわけではない
考えるまでもなく、当たり前の話ですが。
このタイトルには「コンサルタントとしての幸せはいただくフィーに単純に正比例するわけではない」という意味もありますし、より広く、コンサルタントに限らず、「お金をたくさん稼げば即幸せになるわけではない」という意味もあります。
特に後者については「お金を稼いでいる人が幸せなら世界一の幸せ者はジェフ・ベゾスですか」という話を持ち出すまでもなく、幸せはもちろんお金なんかでは測れない、というのは誰しも理解しているところでしょう。
これについてはアカデミックな研究結果もあるので、ご紹介します。
行動経済学者でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの「収入と幸福度の関係について」の研究です。2004年にアメリカで行った調査では、世帯主の年収が5万ドル以上9万ドル未満までは、所得が増えるほど幸福度も上がっていきました。ところが、年収5万ドル以上9万ドル未満の人たちと、年収9万ドル以上を稼ぎ出す人たちの間では、幸福度に明らかな差が見られなくなりました。
さらに、同調査では「いくら稼げば満足するか」という聞き取りも行っていますが、暮らしに対する満足度を10段階で自己評価する「生活評価」の数値は、年収が増えるにつれ一貫して上昇しました。しかし「昨日笑ったか」など「感情的幸福」の度合いは年収7.5万ドル前後で頭打ちになりました。
これらの実験結果から、カーネマンは「高い収入で満足は得ることができるが、幸せは買えない」とし、さらに収入に対する自己評価というのは多くの場合、他社との比較から導かれているため、比較対象によっては、いくら稼いでも幸せを感じられず人生に不満が残ると結論づけています。
※芦田敏之 著『日本一働きやすい会計事務所』クロスメディア・パブリッシングより引用
この研究結果がコンサルタントとして働いている我々にとっていっそう興味深いのは、出てきている年収レンジです。
上記研究結果に出てきている「年収9万ドル」は、現在の為替レートで換算すると日本円で大体年収1,000万円ということになりますが、コンサルタントとして相応に仕事をすることができていれば、少なくともだいたいそのくらいの年収になるという点で、ある意味我々にとって「親しみのある」金額感と言えるのではないでしょうか。少なくとも遠い世界の話ではないですよね。
その年収1,000万円までは所得が増えるほど幸福度も上がっていくが、それ以上は所得と幸福度に明らかな相関が見られなくなっていく、とのこと。つまり、いま年収1,000万円で、かつ「もっと稼いで幸せになろう」と思ってる人がもしいるのだとすると、この研究結果はその人にとってはある意味、酷なものかもしれません。それ以上稼いでも幸せが増えるわけではないよ、ということですから。
これについては、以前、ホリエモンこと堀江貴文氏が言っていたことがシンプルに的を射ていると思います。
別に金がなくたっていいじゃん。
今の自分の生活に対して不満がある人は、それを金が解決してくれると思い込んでるんでしょ。
年収5000万円になったら自分は楽しくなるはずだと。
そんなわけないだろっていう話なのよ。
それはお前がつまんないだけ。
※新R25「ホリエモンにお金について突っ込んだけど、何を聞いても価値観はひとつだった」より引用
私はこの考え方にとても共感します。
「幸せになるためにお金を稼ぐ=フィーをきちんといただく」という考え方ではなく、幸せは、コンサルティングやそのフィーの多寡とは切り離して、やりたいことをやったり、周りの人との関わりの中で見つけていったりすることで追求していきたいものです。
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