Independent Consultant – フリーコンサルタントの実態

フリーコンサルタントの実態 ~より充実したON&OFFを求めて、コンサルティングファームから独立して個人事業主として働く(2021年版)

個人事業主コンサルタントとして独立・起業する最大のリスク

   

「個人でコンサルタントやっています」と言うと、多くの人が驚きます。
その驚きには「仕事をとれなかったら収入がなくなるだろうに、そのリスクを抱えてやっているのはすごい」であったり、「個人でやっていても仕事を取り続けられる自信があるんだな」であったり、そういったニュアンスが往々にして含まれているように思います。

個人事業主として独立する最大のリスクは、私もこの点にあると思っています。

案件がなくなったら収入が途絶え、食べていけなくなる

同じコンサルタントでも、会社(ファーム)に属していれば、Available(稼働していない状態のこと)でも給与収入は当然担保されるところが、個人だとそのいわばセーフティーネットがなくなります。個人事業主には誰も給料を払ってくれませんので、仕事がなければ収入もなくなります。
よく、コンサルティングファームはUp or Out(アップオアアウト)などという表現でその厳しさが取り沙汰されます。UpかOutかの分かれ目はパートナーはもちろん、プリンシパルやディレクター以上のクラスであれば仕事をしっかり取ってこれるかに大きく依存しますが、かといって、ある1ヶ月仕事が取れなかったからといって、その1ヶ月が即収入ゼロになることはありません。少なくとも数ヶ月から1年程度のスパンで見て、成績が芳しくない人が”Out”になることがあるだけなので、個人でやる場合はこれと比較しても、より猶予がないことになります。

このリスクについて私がどう考えているかというと…正直そのまま受け止めています。

仕事が取れなかったら収入がなくなる。だから仕事を続けられるようにがんばろう

もちろん、複数案件を掛け持ちすることによって全案件が一気になくなる=収入がゼロになるリスクを抑えたり、時間的・精神的に余裕をもって営業をする工夫をしたり、といったことはしていますが、このリスクを回避するうまい方法など、基本的にはないと思っています。個人事業主として独立コンサルタントになることを考えるなら、このリスクを認識し、それを受け止める覚悟を持つことです。

またこの「仕事がなくなる」には、「営業しても仕事がとれない」というケースもさることながら、以下のケースも含まれます。

健康面に問題が生じて、稼働できない
企業や所属している健康保険組合によっては、休職中も診断書があれば給与の何割かが数ヶ月間支給されるところもありますが、個人では、自分で入院保険等に加入しない限り、収入が途絶えるリスクがあります。

・家族の介護で稼働できない
企業によっては介護休暇という有給休暇制度を設けているところもありますが、個人だと、稼働しないことには収入はなくなってしまいます。

・急に契約を打ち切られて仕事がなくなった
上に、Up or Outなどと書きましたが、とはいっても、日本の企業が従業員を解雇するのは相当ハードルが高く、急な解雇は極めて稀です。また、仮に会社を辞めたとしても、雇用保険という制度があり、それに頼れば一定の収入は確保できます。個人事業主としてやっているフリーコンサルタントは、あくまでもクライアント企業との業務委託契約であり、雇用契約ではないため、これらの制度は関係ありません。

また、時間軸を加えて考えてみると、こういったリスクにも目が行きます。

年を重ねれば重ねるほど、仕事が取れなくなって正社員としての再就職を考えた場合、働き口が見つかりにくくなる

以前、この記事で、クライアント側のメインの相手となる事業部長が部長が40代前半だとすると、彼らとして「自分より年上のコンサルタントはなんとなく使いにくい」という心理があることには目を向けておく必要があると書きました。この心理的障壁を打破できず、例えば40代後半になっていよいよ仕事が取れなくなった場合、そこから再就職活動して正社員の道に戻ろうとしても、30代の転職などと比べるとその難度は格段に上がることが想定されます。
40代も後半となると、転職求人はそもそも管理職やエグゼクティブクラスが中心で、平社員の求人自体ほとんどありません。管理職に求められるのは、マネジメント経験です。「自分の配下に何人いたか」も重要視されます。その人材要件に対して「○年間ずっと個人でやってきました」という人はそれだけで大きなハンデになります。また、「自分はそんな上のポジションじゃなくていいです」という形でコストパフォーマンスを見てもらおうとする、つまりは「仕事はできるけど、給与は高くなくていい。平社員でいい」という作戦で転職、再就職を図ろうとするミドル層の方もたまにいますが、それとて先方からするとネガティブに映ることも少なくありません。「その年齢であれば、最低でもこのポジションについてもらえる人でないと困ります」ということです。
ずっと会社員として働いていれば(コンサルティングファームだったらUp or Outというのはありますが)50歳、60歳になって働き口を探すという苦労をせずに済むケースも多いでしょう。会社員でいること、ましてや終身雇用で囲ってもらうことには相応のメリットもあるのです。

「フリーコンサルタントで年収2,000万」とか「180万円/月以上の案件多数」といった広告をよく目にしますが、その裏には「仕事がとれないと収入ゼロ」のリスクが常に在ることを意識し、ヘッジ可能な部分はヘッジして動かないと、いつの間にか収入が先細り、再就職も難しい袋小路に来ていたということにもなりかねません。今後、独立することをお考えの方はこの点について考えを巡らせておくに越したことはないと思います。


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